食事は美味しいですか?
84才の父は元気な人でした。
ある日の午後、腹痛を感じしばらく出てない便のことも不安に思えたので内科を受診しました。すぐに入院するべき、大腸の状態でした。
そういう状態で食べ物を取り込むことは、症状を悪化させるので、『絶食』『栄養を補給するための点滴』をすることになりました。
食べるという意欲は全くなく、食事を食べなくていい点滴は楽だという始末。辛い症状があるから食べれないのだろう。父の姿に、活力は全く感じない。
米やパンやいもなどの炭水化物を生きる上でのガソリンとするならば、父は長いことガソリンを供給していないのです。
入院は35日間でした。入院中は、筋肉の力の衰えや体内のガスが理由で、また発熱もあり、結局27日間ほぼ絶食でした。
体重は、7キロほど減りました。
27日間という長い間、食事をとらずにいるとそれも当たり前になってくるようです。
食欲があまりわかなかったり、気持ちが安定しない事もあって栄養をとるための点滴を続けていたことはよかったと思っていたようです。
そして、ひさしぶりに食事が用意されたときも、あまり美味しいと思わなかったそうです。
食べたいという気持ちがあまりなかったからでしょうか。
それでも、味付けが濃いカレイの煮つけを食べたときが”美味しい”と感じるきっかけになったそうです。
25本以上自分の歯がある父は、しっかりかむことが出来ます。そんな父に、『食事を口から摂るときに食べ物の硬さは美味しさに関係する?』と聞いてみました。『硬さと美味しさは関係ない』と言っていました。噛むこと、噛めることは嬉しいものだと思っていたのでこの答えは意外でした。でも、食事の希望でお粥は嫌、普通の硬さのご飯にしてほしいと伝えていました。やはり、やわらかい物は物足りないようです。
かむことで味を感じる、かむことで硬さを感じる、そして体に必要な栄養を摂れることは口から食べ物をとることで実感できます。
当たり前に食べていたときは感じていなかった事を、改めて感じたと父は言います。
一生自分の歯でかんで、口から栄養をとるという意味を実感して教えてくれました。
『食事をすると言うことは、元気になる感じがする』と父は言いました。
『食事は楽しみであり、喜びだ』とも言っていました。
それには、たくさんの健康な歯が必要です。自身の健康を取り戻して、びっくりするほどの食欲を取り戻して体重も戻りつつあります。
強い丈夫な歯でかむことが元気回復の要だと感じているようです。
ずっとずーっと自分の歯を使って、口から食事をしてほしいと皆に伝えたいです。食べられないと体重だけじゃなく元気も奪われていくことを見せられたから強く思います。
今日も食事は美味しいですか?
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ドクタープロフィール

原歯科医院 院長
原 英次
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