【幼児・小学生の歯科知識】ダラダラ食べはむし歯を呼ぶ?〜お口の中の時間割を守ろう〜

「おかしを食べるのはダメじゃないけど、ダラダラ食べはやめようね。」
歯科医院でよく聞く言葉ですが、みなさんはその理由を知っていますか?
実は、むし歯は“食べる量”よりも 「食べる時間の長さ」 に強く関係しています。
同じ量のお菓子でも、5分で食べるのと30分かけて食べるのとでは、むし歯になるリスクが大きく変わるのです。
このコラムでは、
- ダラダラ食べがどうしてむし歯をつくるのか
- どんな食べ方がむし歯をふせぐのか
- 今日からできる簡単な工夫
をわかりやすく解説します。
ダラダラ食べってどんな食べ方?
まず「ダラダラ食べ」とは、
長い時間ずっと食べ物や飲み物がお口の中にある状態のこと。
例えばこんな場面です。
- 宿題をしながらずっとお菓子をつまんでいる
- 遊びながらジュースをちょこちょこ飲む
- 休みの日にテレビを見ながら1時間かけておやつを食べる
- 水分がわりにスポーツドリンクをずっと飲んでいる
これらはすべて 「ダラダラ食べ」 にあてはまります。
「そんなに悪いの?」「量が少しだからいいでしょ?」
と思うかもしれませんが…
実は、ダラダラ食べこそむし歯の天敵なのです。
むし歯ができる仕組み:お口の中の“酸性の時間”がポイント
食べ物を食べると、お口の中の細菌(むし歯菌)が糖を食べて酸を出します。
その酸によって歯が溶けてしまう状態を 「脱灰(だっかい)」 といいます。
でも安心してください!
私たちには 唾液(だえき) という最強の味方がいて、酸を中和して歯の溶けてしまったところを元に戻します。これを 「再石灰化(さいせっかいか)」 と呼びます。
●むし歯ができる流れはこうです
- 食べる
- お口の中が酸性になる(歯が溶けやすい状態)
- 唾液が働き、中性に戻す(歯を修復)
普通はこのサイクルをくり返して問題ありません。
しかし――
ダラダラ食べはこの修復タイムがまったくやってこない!
食べている間はずっと酸性状態が続くため、歯が溶ける時間が長くなり、むし歯へ一直線というわけです。
量より「回数」や「時間」がむし歯リスクを決める
むし歯予防の専門家は
「おやつの量よりも、食べる回数と時間が大事」
とよく言います。
それはなぜか?
●例え話でくらべてみましょう
Aくん
→ チョコを5分でパッと食べる(量は多め)
→ すぐに酸性 → すぐに唾液で回復
Bさん
→ 同じチョコを30〜40分かけて少しずつ食べる(量は少なめ)
→ 酸性状態がずっと続く → 歯は溶けっぱなし
この場合、むし歯になりやすいのはBさんです。
量が少なくても、「だらだら、チョコチョコ食べる」ほうが危険なんです。
ジュースやスポドリは“飲むダラダラ食べ”になりやすい
実は、むし歯リスクが高いのはお菓子だけではありません。
特に注意が必要なのが次の飲み物です。
- ジュース
- スポーツドリンク
- 乳酸菌飲料
- 甘いコーヒーや紅茶
- 炭酸飲料
- エナジードリンク(子どもは×)
これらをチビチビ飲むと、
お口の中がずっと酸性のまま。
しかも、スポーツドリンクは“健康的な飲み物”に見えて油断しがちですが、実は酸性がとても強く、むし歯リスクも高いのが特徴です。
ダラダラ食べがクセになると起こること
ダラダラ食べは、むし歯以外にもさまざまな悪影響を与えます。
●起こりやすいトラブル
- 食欲のリズムがくずれる
- ご飯が食べられなくなる
- 早食い・偏食につながる
- 太りやすい体になる
- 歯みがきをしてもむし歯が防ぎにくい
特に「ご飯の前にお菓子をダラダラ食べて食欲がなくなる」というのは、小学生に多い悩みです。
むし歯を防ぐための“3つの食べ方ルール”
では、どうしたらダラダラ食べを防げるのでしょうか?
誰でもすぐできるルールを紹介します。
① おやつの時間を決める(1日1〜2回)
例えば・・・
- 15:00〜15:10の10分間だけ
- 夜ご飯の2時間前よりおやつは食べない
「時間を決める」だけで、むし歯リスクは大きく下がります。
② おやつは“食べる場所”を決める
- テレビの前
- 勉強机
- ベッド
これらで食べるとダラダラ食べしやすくなります。
おすすめは
「ダイニングで食べたら終わり」
というルールをつくること。
“ながら食べ”がなくなるので、食べすぎも防げます。
③ 飲み物は「水かお茶」を基本にする
ジュースを飲む時間が減るだけで、むし歯リスクはグッと減ります。
スポーツドリンクは「運動のあとだけ」にするなど、ルール化がおすすめです。
むし歯になりにくいおやつってあるの?
あります!
それは「むし歯になりにくい性質をもつおやつ」です。
●むし歯になりにくいおやつの例
- チーズ
- ナッツ(大人が一緒のとき)
- するめ
- ヨーグルト(砂糖が少ないもの)
- おにぎり
- 野菜スティック
- フルーツ
反対に、むし歯になりやすいのは
- キャラメル
- グミ
- クッキー
- ポテトチップス
- 甘いジュース
など、「歯にくっつく」「口に残る時間が長い」食べ物です。
甘いものが大好きでも大丈夫!大切なのは“食べ方”
歯科医院の多くの先生は「甘い物を禁止する」とは言いません。
甘いものは楽しみのひとつですし、完全にゼロにする必要はないからです。
大切なのは…
“お口の中を酸性にしている時間”を短くすること。
そのために
- 時間を決めて食べる
- 食べたら終わりにする
- ジュースをダラダラ飲まない
- 食後は歯みがきをする
これだけでむし歯は大きく防げます。
今日から使える「ダラダラ食べ防止テクニック」
- おやつは小皿に出す(袋のまま食べない)
- 食べる前に“タイマーを10〜15分にセット”
- おやつの後はキシリトールガムを噛む
- 家族と一緒に「おやつ時間」を決める
- 飲み物はお茶か水を基本にする
小学生でも今日から実践できる方法ばかりです。
まとめ:正しい食べ方でむし歯は防げる!
ダラダラ食べがむし歯を呼ぶ理由は、
お口の中が長い間酸性になり、歯が溶け続けてしまうから。
だからこそ――
- 時間を決めて食べる
- ジュースをチビチビ飲まない
- 食べた後は歯みがきをする
この3つを守るだけで、むし歯になるリスクは大きく減ります。
「食べ方」を少し変えるだけで、あなたの歯をずっと守ることができます。
歯みがきと同じくらい、食べ方の習慣はとても大切です。
今日から少しずつ始めてみましょう!
ドクタープロフィール
原歯科医院 院長
原 英次
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