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2025.11.20
【幼児・小学生の歯科知識1/29】歯の種類と役割 乳歯と永久歯のちがい
みなさんは、毎日あたり前のようにごはんを食べ、笑い、話をしていますよね。でも、その中で大切な働きをしてくれている“歯(は)”について、どこまで知っていますか? 歯はただ白くて固いだけの部品ではなく、体の中でも特に大事な役割をもつパーツです。しかも、歯にはいくつかの種類があり、1本1本がチームのメンバーのように役割を分担しながら働いています。
このコラムでは、「歯って、すごい!」と思えるように、前歯・奥歯のちがい、乳歯と永久歯のちがい、そしてそれぞれの役割についてわかりやすく説明します。
歯の種類は大きくわけて4つある
人間の歯は、形や位置によって大きく4つの種類に分かれています。
- 前歯(ぜんし)
- 犬歯(けんし)
- 小臼歯(しょうきゅうし)
- 大臼歯(だいきゅうし)
乳歯の時期には小臼歯がなく、大臼歯が少ないなどの違いがあります。そのため、乳歯と永久歯では生えている種類や本数が変わるんです。乳歯は20本、永久歯は28本である人が多いです。
歯は口の中でただ並んでいるだけではありません。それぞれが「切る」「引きちぎる」「すりつぶす」といった専門の仕事をしています。まるで料理をする時に包丁やフォークなど道具を使い分けるのと同じです。
前歯の役割:食べ物を“切る”スペシャリスト
前歯は鏡で一番よく見える歯で、笑うとまず目につく部分です。薄くてシャープな形をしていて、まるでナイフのように食べ物をスパッと切る力があります。
●前歯がないとどうなる?
もし前歯がなかったら、食べ物をうまくかじり取れなくなり食事のスピードはガタ落ちします。また、空気の抜け方が変わるため、「さ行」「た行」がうまく発音できず、話し方にも影響がでます。つまり前歯は、食べる・話す・笑うという3つの大事な行動を支えているのです。
犬歯の役割:食べ物を“引きちぎる”力持ち
犬歯はとがった形をしていて、前歯のすぐ横にあります。とても根が長く、力が強い歯です。肉やかたいおかずを引きちぎる時に大活躍します。
さらに犬歯は上下のあごの位置をガイドする働きもあり、左右にあごが動く時に他の歯を守る役目も持っています。見た目以上に大事な存在なんです。
小臼歯・大臼歯:食べ物を“すりつぶす”すごい選手たち
奥歯の仲間である小臼歯と大臼歯は、食べ物を細かくすりつぶすための“ミル(臼)”のような働きをします。特に大臼歯はかみ合わせの部分がデコボコしていて、その形がすりつぶすのに最適です。
●奥歯は栄養吸収の入口
食べ物が十分にすりつぶされないまま飲み込むと、胃や腸に負担がかかり、栄養の吸収も悪くなります。奥歯は体の健康を守るためのとても重要な役割を果たしているのです。
●むし歯になりやすい理由
奥歯は形が複雑で奥にあるので歯ブラシをとどかせにくく、むし歯ができやすい場所です。特に6歳ごろに生える「6歳臼歯」は、生えたばかりの頃は背が低く磨きにくいため、むし歯リスクが非常に高いです。
乳歯と永久歯の違い
年長さん、小学生はちょうど乳歯から永久歯に生えかわる大事な時期です。
●乳歯の本数
乳歯は全部で 20本。永久歯よりも小さく白く、かたさも弱めです。
●永久歯の本数
永久歯は 28〜32本(親知らずを含むと32本)。
●乳歯は“仮の歯”ではない
乳歯はどうせ抜けるからといって適当に扱うのは大きな間違い。乳歯には
- 食べ物をかむ
- 正しい発音を助ける
- あごの成長をうながす
- 永久歯が正しい場所に生える道しるべになる というとても重要な役割があります。
乳歯がむし歯でボロボロになったり、早く抜けてしまうと、永久歯が曲がって生えたり、かみ合わせが悪くなったりすることもあります。
永久歯は“一生もの”の大切な歯
乳歯とちがい、永久歯は生えかわりません。むし歯で抜いたり、ケガで折れたりして失った場合、二度と自然には戻らないのです。
だからこそ小学生の時期に、歯を大切にする習慣を身につけることがとても重要なのです。
歯が抜ける順番と生えかわる流れ
だいたいの目安は次の通りです。
- 5~7歳:前歯が抜け始める
- 6歳前後:6歳臼歯(永久歯)が奥に生える
- 7〜9歳:前歯・犬歯の多くの交換
- 9〜12歳:奥歯の生えかわりが進む
6歳臼歯は乳歯のもっと奥に生えてくるため、「いつの間にかむし歯」になってしまうことが多いので要注意です。
歯の構造についても知ろう
歯はただの白い石のようなものではなく、いくつもの層でできています。
- エナメル質:体で一番かたい部分
- 象牙質:エナメル質より柔らかめでむし歯が広がりやすい
- 歯髄(しずい):神経があり、痛みを感じる部分
- 歯根:あごの骨にしっかり埋まり、歯を支える根っこ
むし歯が深くなると痛くなるのは、神経に近づくからなんですね。
歯の仕事は“食べる”だけじゃない
歯は生活のあらゆる場面に関わっています。
- 発音を助ける
- 顔の形を整える
- 笑顔に自信をもたせる
- 噛むことで脳を活性化し集中力UP
- スポーツのパワーにも影響
噛む力が弱い子は集中力が続かないとも言われています。歯は勉強にもスポーツにも大切なんです。
歯を守るために今できること
- 一日2~3回の歯みがきの習慣
- 寝る前は必ずていねいにみがく
- デンタルフロスを使う
- フッ素入り歯みがきペーストを使う
- 定期的に歯医者でチェック
- 間食はだらだら食べない
この時期についた習慣は、大人になってもずっと続きます。
永久歯を一生大切にするために、今が“いちばん大事な時期”なのです。
まとめ
歯は1本1本が専門の仕事を持つ大事なパートナーです。
- 前歯は食べ物を“切る”
- 犬歯はかたいものを“引きちぎる”
- 奥歯は“すりつぶす”
- 乳歯は永久歯の“ガイド”
- 永久歯は一生の“相棒”
このことを知っているだけで、歯みがきや生活習慣の意識が大きく変わります。
あなたの大切な歯を守るのは、あなた自身の習慣です。
今日から、歯をもっと大事にしてあげてくださいね。
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2020.03.30
ウイルス感染

コロナウイルス感染の危機感が高まる今日この頃です。
多くのカタカナによる説明により、なんだか大変なことになっていることを感じます。 (オーバーシュートによるロックダウン。とは…??)
目に見えないものに対する怖さってあると思います。私たちにできることの一番大切なことは、病気をもらわないように『予防』することです。何をしたら絶対大丈夫ってことはありません。
でも、私たちができることを考えて実行してみませんか。
その一つが、お口の中のケアです。
ウイルス感染を防ぐとは、細胞の中にウイルスが入りこむのを防ぐということです。人間は無菌状態にいるわけではありません。
なんらかのウイルスは、私たちの周囲に常にあると思っていましょう。
ウイルスは、細胞の中に入り込んで感染が起こります。細胞の中に入りこむために必要なのは、タンパク質分解酵素です。ウイルスは、粘膜から細胞に侵入します。特に口で呼吸している人は、外のウイルスをダイレクトにのどの粘膜で受けます。もちろん、口の中にもたくさん入りこみます。
粘膜にくっついたウイルスは、タンパク質分解酵素の力を借りて細胞に侵入していきます。その酵素を持っているものが、ある歯周病菌なのです。
歯周病菌を口の中にたくさん持っている人の方が、感染リスクが高いのはそのためです。
さらに、歯周病菌をたくさん持っている人は、歯ぐきから出血しやすい状態だったりします。
歯周ポケットといわれる歯と歯ぐきの隙間から、出血しやすい状態とはどういうことかというと、皮膚でいうとすりむいて一皮むけてしまって血がにじんでいる状態です。
そんなところに、ウイルスが付着すると簡単に体の中に入りこむことが理解できるのではないでしょうか。
すりむけたところに、ウイルスがくっついて歯周病菌の助けをかりて感染することをイメージしてみてもらうと怖いことに気づけます。
多くの歯科関係が口の中のケアを重要であるとお伝えする理由です。普段の個人のはみがきが、とてもとても大切です。
それは、口の中の歯石や着色などの邪魔なものがない環境でできてこそ効果があります。
そして、歯周病がすでに進んでいるのなら自分でケアできないところが出てきます。
ご自身の口の中はいかがですか?
大人の口の中に歯周病菌がいない人はいません。
程度の差があるとしても、ほとんどの大人は歯周病という現実です。プロのケアを受けることは大切です。口の中のケアをすることで、ウイルス感染予防していきましょう。
インフルエンザもウイルス感染です。日本歯科医師会”インフルエンザ予防と歯周病菌”という動画があります。ご覧いただくと、お口の中のケアの重要性がより伝わると思います。
https://www.jda.or.jp/tv/96.html
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2020.03.22
たくさんの歯があると幸せ(厚生労働省調べ)
年齢別歯の本数調べの分布表を作ってみました。若いころに沢山あった歯が、年齢を重ねるうちに減っていってしまう状況が読み取れます。
幼いころに生えてきた歯は、抜け替わりすべて永久歯になります。一生使えるもののはずなのに歯の本数が減ってしまう現実を示しています。
なぜ歯は減ってしまうのでしょう。
むし歯や歯周病、外傷や咬む力の問題などなどその原因は一つではありません。口は、食べ物の入り口で、生きる力の入り口なのです。
そして、その入り口は大きく口を開けるだけで見えるところなのです。口や歯の状態を知るのに、メスやはさみはいらないのです。かかりつけの歯科医院をもって、必要な治療と必要なケアをするだけでいいのです。
幼い時からの通院、チェックは最高の予防です。でも、自分自身の健康に関心を持った時からの通院も最高の予防の開始時期です。
原歯科医院に定期的に通院している方の歯の本数の分布表も作ってみました。
上記の人数と近くなるような人数の分布表を作ってみました。2年間の統計です。
若い時には、歯がたくさんあります。 年齢を重ねると、歯の本数が少ない方もいらっしゃいます。それでも、一般的な歯の本数と比べるといかがでしょう。


比較で同じ年代ごとに並べてみました。若干の年齢の範囲は違いますが、同年代を並べてみました。若いころ、40才くらいまでは大差がありません。




50才台になってくると、歯を失う経験をしている人が出てくるようです。すでに、10本以下の人がいることもわかります。


上下の円グラフを比べてみてください。60才台の歯の本数の分布です。一般的に、歯の本数が20本未満の人はすでに全体の1/4以上います。歯の本数が20本未満の人が25%です。
原歯科に継続的に通院してくれている方の歯の本数と比較してみましょう。歯の本数が20本未満の人は8.8%という数字です。
定期通院とは、先生のチェックと診断を受けているということです。さらに、定期的にプロのクリーニングと自分自身でするべきケアのアドバイスを受けているということです。


そして、70才をこえた時のお口の中の状態の比較をしてみました。明らかに、歯が20本以上ある割合が多いのは、定期通院を続けている方です。大人の歯の数は、親知らずを除いて28本です。この表では、20本以上という項目でまとめています。そこには8本失った人もいれば、1本しか失っていない人も含まれます。
原歯科医院に、はじめて来てくれた時に、すでに歯の本数が少なかった人もいます。そして、今、定期的に通い続けてくれています。




来院し始めてから、どのくらい歯を失ってしまったかという統計をだせば、さらに、驚きの結果が表れると思います。(今回は、厚生労働省の統計に合わせた比較を行いました)
結論
若いうちは、定期健診を受けていることの本当の意味を実感できないかもしれません。でも、継続して定期健診を受け続けることで、人生の後半に大いに実感できることがあるはずです。
予防歯科とは、健康であり続けるための歯科です。年を重ねると、『食べることしか楽しみがなくて』なんていう方がいます。食べることは幼くても若くても、年を重ねても楽しみです。そのためには、しっかりとした心配のない歯が必要です。
継続することで成果を期待できるのが、定期健診です。 -
2020.02.10
食事は美味しいですか?
84才の父は元気な人でした。
ある日の午後、腹痛を感じしばらく出てない便のことも不安に思えたので内科を受診しました。すぐに入院するべき、大腸の状態でした。
そういう状態で食べ物を取り込むことは、症状を悪化させるので、『絶食』『栄養を補給するための点滴』をすることになりました。
食べるという意欲は全くなく、食事を食べなくていい点滴は楽だという始末。辛い症状があるから食べれないのだろう。父の姿に、活力は全く感じない。
米やパンやいもなどの炭水化物を生きる上でのガソリンとするならば、父は長いことガソリンを供給していないのです。
入院は35日間でした。入院中は、筋肉の力の衰えや体内のガスが理由で、また発熱もあり、結局27日間ほぼ絶食でした。
体重は、7キロほど減りました。
27日間という長い間、食事をとらずにいるとそれも当たり前になってくるようです。
食欲があまりわかなかったり、気持ちが安定しない事もあって栄養をとるための点滴を続けていたことはよかったと思っていたようです。
そして、ひさしぶりに食事が用意されたときも、あまり美味しいと思わなかったそうです。
食べたいという気持ちがあまりなかったからでしょうか。
それでも、味付けが濃いカレイの煮つけを食べたときが”美味しい”と感じるきっかけになったそうです。
25本以上自分の歯がある父は、しっかりかむことが出来ます。そんな父に、『食事を口から摂るときに食べ物の硬さは美味しさに関係する?』と聞いてみました。『硬さと美味しさは関係ない』と言っていました。噛むこと、噛めることは嬉しいものだと思っていたのでこの答えは意外でした。でも、食事の希望でお粥は嫌、普通の硬さのご飯にしてほしいと伝えていました。やはり、やわらかい物は物足りないようです。
かむことで味を感じる、かむことで硬さを感じる、そして体に必要な栄養を摂れることは口から食べ物をとることで実感できます。
当たり前に食べていたときは感じていなかった事を、改めて感じたと父は言います。
一生自分の歯でかんで、口から栄養をとるという意味を実感して教えてくれました。
『食事をすると言うことは、元気になる感じがする』と父は言いました。
『食事は楽しみであり、喜びだ』とも言っていました。
それには、たくさんの健康な歯が必要です。自身の健康を取り戻して、びっくりするほどの食欲を取り戻して体重も戻りつつあります。
強い丈夫な歯でかむことが元気回復の要だと感じているようです。
ずっとずーっと自分の歯を使って、口から食事をしてほしいと皆に伝えたいです。食べられないと体重だけじゃなく元気も奪われていくことを見せられたから強く思います。
今日も食事は美味しいですか? -
2020.01.04
インフルエンザ予防

インフルエンザの流行は、寒いこの時期に毎年毎年やってきます。体中に症状があり、のどの痛みや強い咳に加え、倦怠感や関節の痛みまで引き起こします。中でも、乳幼児や高齢者は重症になることもあるので注意が必要です。
どのようにうつるかというと……
1)インフルエンザ患者の咳やくしゃみを直接吸い込んでしまい感染=飛沫感染
2)インフルエンザウィルスが付着した物にふれてしまい、さらにその手で鼻、耳、口を触り体内にウィルスをいれてしまうことで感染=接触感染
3)換気が十分じゃない環境で、インフルエンザウィルスが塵やほこりに付着し空中を舞うことで感染=空気感染
予防対策として有効と考えられてるものは、日常的な手洗い、うがい、鼻うがい、マスクの着用さらに口腔ケアなどがあります。
ただし、近年厚生労働省がマスクについて、「感染拡大を防ぐのに有効だが、自分を守る手段としては推奨してない」という記事がありました。 もちろん咳が出ているときは、”咳エチケット”としてのマスクの着用はマナーとして心がけていただきたいところです。ただ、ガーゼマスクの網目は、ウィルスが簡単に通ることが出来る大きさであることも理解してほしいです。 では、最近よく見かける不織布(ふしょくふ)製のマスクの網目はどうでしょう。これはガーゼマスクよりも細かいのですが、ウィルスの大きさの50倍はあります。ウィルスが通過する可能性は多いにあります。
人の周りにたくさんの細菌やウィルスがいること、人の体内に細菌やウィルスがいることは、至極当たり前のことです。 そして、セルフ口腔ケアとプロの口腔ケアでインフルエンザウィルスの侵入・定着を防ぐことが出来ます。
インフルエンザウィルスは、細菌と違って自ら動いたり増えたりできません。自ら行きたいところに行く訳じゃなく、他力が働くことにより感染するのです
123の方法で体内に入り、粘膜から細胞に入り込んでインフルエンザは発症するのです。 粘膜から細胞に入り込む際のプロテアーゼという酵素をプラークは持っています。 粘膜から感染するきっかけに必要なプロテアーゼが口の中に多ければ、インフルエンザウィ ルスは簡単に粘膜から入り込み定着してしまいます。
口の中が汚れていることが、インフルエンザウィルスの感染を容易にしているのです。 口の中のプラーク(細菌)は、インフルエンザウィルスを粘膜の中に侵入しやすくする働き があることが厄介なのです。
歯や舌などに付着しているプラークを除去する事が、インフルエンザ予防の一つになります。 ご自身のお口ケア、専門家によるお口ケアがいろんな理由で欠かせないものとなっています。
ドクタープロフィール
原歯科医院 院長
原 英次
詳細はこちら
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