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【中高生歯科予防コラム7/40】部活中のスポドリ問題:歯が溶ける?!

【中高生歯科予防コラム7/40】部活中のスポドリ問題:歯が溶ける?!


~勝利を目指す君の歯を、陰で蝕む「最強の敵」の正体~








スポーツドリンクは「功労者」か「破壊者」か




汗を流して練習に励む中高生の皆さん、本当にお疲れ様です! 夏の炎天下でも、冬の厳しい寒さの中でも、部活動に打ち込む姿は素晴らしいものです。




激しい運動の後、冷たいスポーツドリンクを一気に飲む瞬間。 水分補給、エネルギー補給、電解質補給…。スポーツドリンクは、パフォーマンスを維持し、熱中症を防ぐための、まさに「部活の功労者」ですよね。




しかし、その「功労者」が、あなたの歯にとって、最も恐ろしい「破壊者」になりうるという事実を知っていますか?




むし歯菌の仕業ではないのに、歯が溶けてボロボロになっていく病気――それが「酸蝕症(さんしょくしょう)」です。そして、運動中のスポーツドリンクの飲み方こそが、この酸蝕歯を急増させている最大の原因なのです。




このコラムは、スポーツを頑張るあなたが、歯を失わずに最高のパフォーマンスを維持するための、歯科予防戦略ガイドです。勝利を目指す皆さんの歯を守るため、その危険なメカニズムと、いますぐできる簡単な対策を徹底解説します。









第1章:スポーツドリンクの二つの顔と歯が溶けるメカニズム




1. 歯が溶ける「酸性度」の基準:pH5.5




あなたの歯の表面は、人体で最も硬い「エナメル質」という鎧で覆われています。この鎧は非常に頑丈ですが、「酸」には非常に弱いという致命的な弱点があります。




  • 安全ライン(中性): pH 7.0(水、お茶など)
  • 危険ライン: pH 5.5(この数値以下で歯が溶け始める)



pH値は数字が1下がると酸性度が10倍強くなる、ということを覚えておいてください。




2. スポーツドリンクの裏側:強烈なpH3.5の衝撃




では、部活で愛飲されているほとんどのスポーツドリンクのpHはどれくらいでしょうか?




製品にもよりますが、多くのスポーツドリンクはpH 3.5~4.0程度です。 これは、歯が溶け始める危険ライン(pH5.5)を遥かに下回る、強酸性であることを意味します。




なぜスポーツドリンクは酸性なのか? それは、甘味の調整や、清涼感を出すため、そして何より保存性を高めるために、「クエン酸」や「リン酸」などの酸味料が大量に加えられているからです。




  • 口に入った瞬間: スポーツドリンクに含まれる酸が、エナメル質のカルシウム成分を直接溶かす「酸蝕症」を引き起こします。
  • 酸と糖のコンボ: さらに、スポーツドリンクには大量の「糖分」が含まれており、これが口内のむし歯菌のエサとなって「酸」を発生させます。



つまり、スポーツドリンクは「酸蝕歯」と「むし歯」の二方向から、あなたの歯を攻撃しているのです。




3. 運動中はなぜリスクが上がるのか?「ドライマウス」の罠




普段、口の中が酸性になっても、唾液が酸を中和し、歯を修復(再石灰化)してくれるため、すぐに歯が溶け出すわけではありません。唾液は歯を守る最強のボディガードです。




しかし、運動中は以下の理由で、そのボディガードの力が極端に弱まります。




  • 脱水による唾液の減少: 汗を大量にかくことで体内の水分が減り、唾液の分泌量も低下します。
  • 口呼吸の増加: 激しい運動中は鼻呼吸から口呼吸になりがちです。口が開いていると唾液が蒸発し、口内が乾燥します。



唾液という防御壁が弱体化した状態で、強酸性のスポーツドリンクを摂取する。これが、部活中の歯が最も危険に晒されるメカニズムです。









第2章:部活中の「飲み方」が歯を溶かす理由




スポーツドリンクが危険なのは分かった。でも、熱中症対策には必要だ。どうすればいいのか? 実は、飲み方ひとつでリスクを激減させることができます。




最悪の飲み方「ダラダラ飲み」




部活動中、喉が渇くたびに一口、休憩のたびに一口と、時間をかけてスポーツドリンクを飲み続けていませんか?




  • 酸性時間が持続: ダラダラと飲み続けると、口の中は常にpH5.5以下の酸性状態に保たれてしまいます。
  • 修復機会の喪失: 唾液が中和や修復(再石灰化)をする暇がなく、歯は一方的に溶け続けることになります。
  • リスクの最大化: 1日1回一気飲みするよりも、1日中かけてチビチビ飲む方が、歯を溶かすリスクは圧倒的に高いのです。



最悪のタイミング・直後の歯みがき




「スポーツドリンクを飲んだから、すぐに歯みがきをすれば大丈夫!」 この発想は危険です。実は、これは歯を削り取る行為になりかねません。




酸性の液体に触れた直後の歯の表面は、一時的に柔らかく、デリケートな状態になっています。 この柔らかい状態で、研磨剤入りの歯みがきペーストを付けてゴシゴシ磨くと、物理的にエナメル質を削り取ってしまいます。酸蝕症の進行を自ら加速させていることになります。




危険な摂取方法「飲む、すぐ横になる」




部活後、疲れてそのままスポーツドリンクを飲んで寝てしまう。これも危険です。




  • 唾液の激減: 睡眠中は唾液の分泌量が極端に減少します。
  • 酸の放置: 飲んだ後の酸性度が中和されることなく、長時間にわたって歯の表面に残り続けます。
  • 夜間の攻撃: 歯が最も無防備になる夜間に、酸の液体が攻撃し続けるという最悪の状況を作ってしまいます。








第3章:酸蝕症はこんなに怖い!進行する五つの症状




酸蝕歯はむし歯のように穴が開く前に、いくつかのサインを出します。放置すると、歯を失うだけでなく、見た目や機能にも深刻なダメージを与えます。




1:歯の変色と透過




  • 変色(黄ばみ): エナメル質が溶けて薄くなると、その下にある黄色い「象牙質」が透けて見えるため、歯が黄色く見えてきます。
  • 透過: 特に前歯の先端がガラスのように透明に透けて見え始めます。これはエナメル質の厚みが失われた決定的なサインです。



2:キーンとくる「知覚過敏」




エナメル質が溶けると、歯の神経に刺激が伝わりやすくなります。




  • 冷たい水や、風が当たっただけで「キーン」としみる。
  • スポーツドリンクを飲むたびに、しみたり、痛むようになる。



部活中に冷たい飲み物を飲めなくなったら、練習にも集中できなくなってしまいます。




3:歯の形態の変化




歯の表面が酸で溶かされるため、自然な凹凸が消え、不自然に丸みを帯びた、ツルツルした見た目になります。 奥歯の噛み合わせの面は、山が削れて平らになり、やがてへこみができて、その部分だけがくぼんで見えるようになります。




4:詰め物・被せ物の浮き




以前治療した歯がある場合、その詰め物(=レジンや銀歯)が、周囲の溶けた歯質よりも盛り上がって「浮いている」ように見えることがあります。 これは、詰め物が外れる原因にもなり、さらに二次的なむし歯を招きます。




5:顎関節症・噛み合わせの悪化




酸蝕症が進行し、奥歯全体が削れてすり減ってしまうと、噛み合わせの高さが低くなってしまいます。 これにより、顎の関節に負担がかかり、「顎が痛い」「口が開けにくい」といった顎関節症を引き起こすことがあります。









第4章:部活を続けながら歯を守る「最強の防御戦略」




スポーツドリンクを敵視する必要はありません。熱中症対策は重要です。 大切なのは、酸性から中性へ、いかに素早く口内環境をリセットするかという戦略です。




1:飲み方の鉄則「ゴクゴク&チェイサー」




ダラダラ飲みをやめるだけで、リスクは大幅に減ります。




  1. 飲む時間を決める: 休憩時間など、飲むタイミングを決め、短時間で飲みきる。
  2. ストローを使う: 可能であればストローを使い、歯に触れる時間を短くする。
  3. 水を飲む(チェイサー)」: スポドリを飲み終わったら、すぐに「水」「お茶」を飲んで口をゆすぐ。



水には中和作用はありませんが、酸性の液体を物理的に洗い流し、酸性度が強い状態を早く安全ラインに戻す手助けができます。水やお茶を、スポーツドリンクとセットで持ち歩きましょう。




2:唾液という天然の防衛隊の強化




唾液の分泌を促すことは、最も有効な防御策です。




  • ガムの活用: 休憩中に「キシリトールガム」を噛みましょう。ガムを噛むことで唾液が大量に分泌され、酸の中和と歯の修復(=再石灰化)を加速させます。
  • 唾液腺マッサージ: 練習前後に耳の下や顎の下にある唾液腺を優しくマッサージすると、唾液が出やすくなります。



3:フッ素で鎧を強化する




日頃の歯みfきで、歯の鎧を最強にしておきましょう。




  • 高濃度フッ素の採用: 「フッ素濃度1450ppm」配合の歯みがきペーストを使うこと。フッ素は酸に溶けにくい硬い結晶を作り、酸蝕歯とむし歯の両方から歯を守ります。
  • フッ素を口に残す: 歯磨き後は、少量の水で1回だけ軽くゆすぐこと。フッ素が歯に留まり、継続的に歯を強化してくれます。



4:スポーツ栄養ドリンクの「代替品」を検討




可能であれば、より歯に優しい飲み物を選びましょう。




水分補給のことを考えるのであれが、水が一番です。また、砂糖と塩分のバランスが細胞のそれと近いドリンクを作って飲むことが大切です。




  • 中性の代替品: 部活中に飲むなら、麦茶や水、または「経口補水液(ORS)」など、スポーツドリンクよりも酸性度が低いものを選びましょう。経口補水液は治療目的のため、多くはpHが中性に近くなるよう調整されています。
  • アミノ酸は注意: BCAAなどのアミノ酸入り飲料も、酸味料が入っていることが多いため、飲み方には注意が必要です。








第5章:勝利と健康を両立させる予防メンテナンス




自己流のケアでは、酸蝕症は防ぎきれません。歯医者さんは「治療」だけでなく「予防」のために活用する場所です。




1.pHチェック(原歯科はやっていません)




口の中の唾液を採取して、その中和能力や唾液量をチェックすることができます。 自分の唾液がどれだけ強いのか、専門的な視点で評価してもらえる歯科医院もあります。




2. 定期的な「プロのケア」でリセット




1~3ヶ月に一度は歯科医院で定期健診を受けましょう。




  • フッ素塗布: 市販品より高濃度のフッ素を塗布してもらうことで、歯の強化を定期的に行う。
  • クリーニング: 歯石や、着色汚れ(=ステイン)をプロの技術で徹底的に除去してもらう。
  • 早期発見: 歯が溶け始めているサインを早期に発見し、進行を食い止める。



3. マウスピースの活用




食いしばりや歯ぎしりの癖がある人は、運動中や睡眠中にマウスピースを装着することで、歯に加わる過度な物理的な力を分散させ、酸蝕歯で弱った歯を保護することができます。









おわりに:歯は一生モノ、スポーツする人にも大切な道具




部活動は、皆さんにとって青春の全てであり、かけがえのない宝物です。 最高のパフォーマンスを発揮するために、道具のメンテナンスを欠かさないように、あなたの「歯」も一生モノの競技用具として大切に扱わなければなりません。




強酸性のスポーツドリンクを飲む行為は、最高の道具に毎日サビを塗っているのと同じです。




今日、このコラムを読んだあなたは、すでにその「錆び止め」の方法を知っています。 「水でゆすぐ」「ストローを使う」「すぐ磨かない」。このシンプルな習慣を身につけるだけで、あなたの歯は酸の攻撃から守られ、将来の数百万円の治療費と、何時間もの通院時間を浮かすことができます。




最高の笑顔と、最高の歯の健康を手に入れて、悔いのない部活生活を送りましょう! 応援しています!