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【中高生歯科予防コラム6/40】テスト勉強のエナジードリンクは「酸の雨」

【中高生歯科予防コラム6/40】テスト勉強のエナジードリンクは「酸の雨」


~その一本が、あなたの歯を「化学実験」のように溶かしている~








はじめに:深夜の勉強机で起きている「静かなる溶解」




中間テスト、期末テスト、そして受験勉強。 眠気と戦いながら机に向かう深夜、あなたの手元には何がありますか? 教科書、ノート、そして、その横に鎮座する、カラフルな缶のエナジードリンク?!。




「これを飲めば翼が生える」「気合いが入る」「眠気が飛ぶ」。 そんなキャッチコピーに惹かれ、今や中高生にとってエナジードリンクは、勉強の相棒であり、必須アイテムになっています。




しかし、ここで残酷な真実をお伝えしなければなりません。 あなたが脳を目覚めさせるために飲んでいるその液体は、口の中に入った瞬間、あなたの歯に対して「強酸性の雨」となって降り注ぎ、エナメル質という最強の鎧をドロドロに溶かしているのです。




むし歯菌がいなくても歯が溶けていく病気、「酸蝕症(さんしょくしょう)」。 今、エナドリ愛飲者の10代に爆発的に増えているこの現代病について、その恐ろしいメカニズムと、歯を守りながら勉強を乗り切るためのサバイバル術を徹底解説します。









第1章:衝撃の事実!エナジードリンクは危険?




1. 歯が溶け出す境界線「pH5.5」




まずは少し化学の話をしましょう。 水溶液の性質を表す単位に「pH(ピーエイチ/ペーハー)」があります。pH7が中性で、数字が小さくなるほど「酸性」が強くなります。




人間の歯の表面を覆う「エナメル質」は、人体で最も硬い組織です。ダイヤモンドのような硬さを誇りますが、実は「酸」にはめっぽう弱いという弱点があります。 口の中のpHが「5.5」を下回ると、エナメル質はカルシウムやリンといった成分を溶かし始めます。これを「脱灰(だっかい)」と呼びます。




2. エナジードリンクのpHは「3」台




では、市販のエナジードリンクのpHはどれくらいでしょうか? 製品にもよりますが、その多くはpH3.0 ~ pH3.5程度です。




「5.5よりちょっと低いだけじゃん」と思いましたか? pHは対数で表されるため、数字が1違うと、酸性度は10倍違います。 つまり、エナジードリンクの酸性度は、歯が溶け出す限界値を遥かに超えた、強烈な酸性なのです。




比較してみましょう。




  • 水・お茶: pH 7.0(安全地帯)
  • 歯が溶けるライン: pH 5.5(危険ライン)
  • 炭酸飲料・エナジードリンク: pH 3.0~3.5(超・危険地帯
  • 胃酸: pH 1.0~2.0



エナジードリンクを口に含むということは、レモンやお酢をそのままかじり続けているのとほぼ同じ、あるいはそれ以上の負担を歯にかけていることになります。まさに、口の中に「酸の雨」を降らせている状態なのです。









第2章:「チビチビ飲み」が招く最悪のシナリオ




エナジードリンクの成分そのものも危険ですが、勉強中の「飲み方」がその危険度を最大レベルまで引き上げています。




1. 勉強のお供=「ダラダラ飲み」の罠




部活帰りに一気飲みするなら、まだマシです(それでも酸性ですが)。 しかし、テスト勉強中はそうはいきません。 「眠くなったら一口」「問題を解き終わったら一口」。 このように、30分、1時間、時には数時間かけて、チビチビとダラダラ飲み続けるのが一般的ではありませんか?




実は、これが歯科医が最も恐れる「酸蝕症一直線」の飲み方なのです。




2. 唾液の「救助活動」が間に合わない




通常、口の中が酸性になっても、唾液が分泌されることで酸を中和し、溶け出したカルシウムを歯に戻す「再石灰化(さいせっかいか)」という修復作業が行われます。 唾液は、あなたの歯を守る優秀なレスキュー隊です。




しかし、チビチビ飲みを続けるとどうなるか? レスキュー隊が到着して修復作業を始めようとした瞬間に、また次の「酸の雨(エナドリ)」が降ってくるのです。 口の中はずっと酸性のまま。pHが安全圏(中性)に戻る暇がありません。 結果、修復されることなく一方的に歯が溶かされ続けることになります。




例えるなら、傷口が治りかけてかさぶたになりそうな時に、またナイフで切りつけているようなものです。これでは、どんなに頑丈な歯でもひとたまりもありません。









第3章:砂糖とカフェインの「ダブル・パンチ」




酸性度だけでなく、エナジードリンクに含まれる成分も、歯にとっては最悪の組み合わせです。




1. 驚異の砂糖量:角砂糖10個分の衝撃(ドリンクの10%が砂糖!)




多くのエナジードリンクには、飲みやすくするために大量の「糖分」が含まれています。 500ml缶の場合、角砂糖に換算すると10個~15個分以上入っていることも珍しくありません。




  • 酸による直接攻撃: ドリンク自体の酸が歯を溶かす(酸蝕症)。
  • 糖による間接攻撃: 糖分をエサにしてむし歯菌が「酸」を作り出し、さらに歯を溶かす(むし歯)。



つまり、エナジードリンクを飲むことは、「酸蝕症」と「むし歯」の二重攻撃を同時に受けている状態なのです。 「眠気覚まし」と引き換えに、あなたは口の中で「むし歯菌のパーティ」を開催しているようなものです。




2. カフェインによる「ドライマウス」の加速




エナジードリンクの主役である「カフェイン」。 覚醒作用がある一方で、「利尿作用」があることは知っていますか? 体内の水分が尿として排出されると、体は脱水傾向になり、口の中の唾液の分泌量も減ってしまいます。




先ほど説明した通り、唾液は歯を守る唯一の盾です。 カフェインによって唾液が減り、口が乾いた状態(ドライマウス)になると、酸を中和する力が弱まり、歯が溶けるスピードがさらに加速します。 「勉強に集中して口がポカーンと開いている」+「カフェインで唾液減少」+「酸性の液体」。このコンボは、歯にとってデス・ロードそのものです。









第4章:鏡を見てチェック!あなたの歯は大丈夫?




「自分は毎日歯みがきしてるから大丈夫」と思っていませんか? 酸蝕症の怖いところは、むし歯菌がいなくても進行すること、そして痛みなく進行することです。 今すぐ鏡を持って、自分の前歯をチェックしてみてください。以下のサインはありませんか?




サイン1:歯が透けて見える




歯の先端(切端)を見てください。 透明になっていたり、薄くなって向こう側が透けるような感じがしませんか? これは、表面の白いエナメル質が酸で溶けて薄くなり、内部が透けてしまっている証拠です。




サイン2:歯が黄色っぽくなった




「最近、歯が黄ばんできた気がする…」 これは着色汚れ(ステイン)だけが原因ではありません。 表面の白いエナメル質が溶けて薄くなると、その下にある「象牙質(ぞうげしつ)」という黄色い層の色が透けて見えるようになります。 酸蝕症による黄ばみは、ホワイトニング歯みがきペーストでゴシゴシ磨いても白くなりません。むしろ、さらに削って悪化させる可能性があります。




サイン3:冷たいものがしみる(知覚過敏)




アイスを食べたり、冷たい風が当たったりした時に「キーン」としみませんか? エナメル質という鎧を失った歯は、神経までの距離が近くなり、刺激に対して非常に敏感になります。 勉強の合間のアイスが苦痛になったら、それはかなり進行しているサインです。




サイン4:歯の表面が丸くツルツルしている




健康な歯には、本来細かい凹凸や溝があります。 しかし、酸で溶けると角が取れて丸くなり、不自然にツルツル、テカテカした見た目になります。 一見キレイに見えるかもしれませんが、これは「溶けてのっぺらぼうになった状態」です。









第5章:賢く戦え!「酸の雨」から歯を守るサバイバル術




「じゃあ、もう勉強中にエナドリを飲むなと言うのか!」 そう怒りたくなる気持ちも分かります。テスト前の追い込み時期、どうしても頼りたくなる時もあるでしょう。




飲み方の革命「ストロー&水チェイサー」




  • ストローを使う: 缶に口をつけて飲むと、酸性の液体が前歯全体に広がります。 ストローを使い、喉の奥へ直接流し込むように飲むことで、歯に触れる面積と時間を最小限に抑えられます。
  • 「水」を挟む(水チェイサー): エナジードリンクを一口飲んだら、すぐに一口の「水」やお茶を含むか、口をゆすぐ。 机の上には、エナドリだけでなく、必ず「水のペットボトル」もセットで置いてください。



シュガーフリー&ガムの活用




  • シュガーフリーを選ぶ: 最近は「カロリーゼロ」「シュガーゼロ」のエナジードリンクも増えています。 酸性であることには変わりませんが、まだこちらの方がマシでしょう。
  • ガムを噛む: 飲み終わったら、キシリトールやリカルデント配合のガムを噛みましょう。 ガムを噛むと唾液が大量に出ます。最強のレスキュー隊(唾液)を強制出動させ、中和と修復を早めることができます。また、ガムを噛むリズム運動は脳の血流を良くし、眠気覚ましにも効果的です。



「睡眠」こそが最強のエナジー




最後に元も子もない話をしますが、エナジードリンクは「元気の前借り」に過ぎません。 カフェインで脳を騙して疲れを感じなくさせているだけで、体と脳の疲労は蓄積しています。




本当に効率よく記憶を定着させたいなら、エナドリで無理やり徹夜するよりも、仮眠をとる方が、脳科学的にも効果が高いことが証明されています。 「今日は寝る!」と決めて布団に入る勇気も、受験戦略の一つです。









その「一本」が未来の笑顔を決める




第一志望校に合格すること。部活で優勝すること。 それはとても大切な目標です。 しかし、その目標を達成した時に、あなたの口の中がボロボロで、前歯が溶けて黄色くなり、冷たいものもしみて噛めない…なんてことになっていたら、どうでしょうか?




合格発表の日、思いっきり笑顔で写真を撮りたいですよね? 好きな人とデートでおいしいものを食べて、心の底から笑い合いたいですよね?




歯は、一度溶けてしまったら、二度と自然には元に戻りません。 皮膚のように再生しないのです。 失ったエナメル質を取り戻すことはできません。、高額な治療費を支払い、人工物に置き換えることが必要になります。




今、あなたが手に持っているそのエナジードリンク。 それが「酸の雨」であることを自覚し、正しい知識で飲んでください。




「ストローを使う」「水を飲む」。 このちょっとした知識とアクションが、あなたの将来の笑顔を守ります。




勉強も、歯のケアも、賢くやるのが「デキる中高生」の流儀です。 さあ、水を一口飲んで口の中をリセットしたら、もうひと頑張りしましょう!応援しています。