【幼児・小学生の歯科知識】食べ物とむし歯:危険なのは甘いものだけじゃない!

「むし歯は甘いものを食べるとなる」と、だれもが一度は聞いたことがあると思います。たしかに、チョコレートやアメ、キャラメルなどの甘いお菓子はむし歯の代表的な原因の一つです。しかし、実はむし歯の原因になるのは甘いものだけではありません。甘くない食べ物でも、食べ方や口の中での変化によってはむし歯を大きく進めてしまうことがあります。
このコラムでは、むし歯がどうして起こるのか、どんな食べ物がむし歯のリスクを高めるのか、そして予防のために今日からできることを、小学生にもわかりやすい言葉でくわしく説明していきます。
■ むし歯はどうやってできるの? 基本のしくみを知ろう
むし歯ができるまでには、いくつかの条件が重なります。むし歯菌(ミュータンス菌)が歯の表面につき、食べたものにふくまれる糖をえさにして酸をつくります。この酸が歯をとかし、やがて穴があいてしまうのがむし歯です。
つまり、むし歯ができるためには次の3つが重なります。
- むし歯菌が口の中にいること
- むし歯菌のエサになる糖があること
- 酸にさらされる時間が長いこと
「むし歯菌がいるだけではむし歯にならない」「甘いものを食べても、すぐにむし歯になるわけではない」ということがポイントです。では、食べ物のどんな部分がこの条件と関係してくるのでしょうか?
■ 甘いものだけじゃない! むし歯リスクの高い食べ物とは?
● 甘くないのにむし歯を進める食べ物がある?
「甘くないから安心」と感じる食品の中にも、むし歯を進めるものがあります。例えば、ポテトチップスやスナック菓子。これらには砂糖が多くないので、甘いお菓子ほどむし歯のイメージはありません。しかし、でんぷんは口の中で分解されると糖に変わり、むし歯菌のエサになります。
さらに厄介なのは「歯にくっつきやすいこと」です。ポテトチップスの細かい粉、クラッカーのかけら、せんべいの破片などは、奥歯の溝に入り込みやすく、長い時間口に残ってしまいます。歯に長くくっつくということは、むし歯菌が酸を作り出す時間も長くなるということ。つまり甘くないスナックでも十分にむし歯の原因になるのです。
● 飲み物にも注意! 甘い・甘くないを超えたリスク
ジュースやスポーツドリンクがむし歯の原因になることは有名ですが、甘い飲み物だけが危険というわけではありません。
例えば、炭酸水(甘くないもの)や無糖の紅茶でも、酸性度が高い場合があります。 酸が強い飲み物は、それ自体が歯の表面を溶かす「酸蝕(さんしょく)」を引き起こし、むし歯菌の攻撃に弱い歯になってしまいます。
さらに、同じ飲み物でも「飲み方」によってリスクが大きく変わります。スポーツドリンクをちびちび飲む、ジュースを時間をかけて飲む、寝る前に甘い飲み物をとる――これらはすべて、口の中が酸性のまま長時間放置されるため、とても危険です。
● 食事の回数・タイミングがむし歯を左右する
むし歯リスクを高めるのは、食べ物そのものだけではありません。食べる頻度も強く影響します。
私たちが何かを食べるたびに、口の中は酸性になり、歯がとけやすい状態になります。
そして、歯の表面から大切なカルシウムが溶け出します。これを「脱灰(だっかい)」といいます。
しかし、時間がたてば唾液が酸を中和し、歯の表面を修復してくれます。これが「再石灰化」です。
ところが、お菓子をだらだら食べたり、すぐにまた何かを口にしたりしていると、再石灰化する時間がなくなり、脱灰ばかりが続いてしまいます。これこそがむし歯が進む大きな理由の一つです。
■ 意外な盲点! “ヘルシー”なのにむし歯の原因?
● ドライフルーツ
ヘルシーなイメージがありますが、実はむし歯リスクはかなり高めです。
理由は
- 糖が濃縮されている
- 歯にねばりつきやすい
- 口の中に長く残る
という条件がそろっているからです。
● フルーツジュース
天然の甘さでも糖は糖。しかも酸性度が高いものも多く、歯にはダブルで負担がかかります。
● ヨーグルトや乳酸菌飲料
加糖タイプには意外と多くの糖が含まれており、毎日続けるほどむし歯のリスクになります。飲むヨーグルトは特に注意。
■ むし歯を防ぐために、今日からできる食べ方の工夫
● 「だらだら食べ」をやめる
食べる回数を決め、時間を空けることで唾液が歯を守る力を取り戻せます。
特に学校から帰ってくるとすぐにお菓子を食べ、夕食までちょこちょこつまむ……という習慣は要注意です。
● 食後は水・お茶で口の中をリセット
糖が残りにくく、口の中が中和されやすくなります。
スポーツドリンクではなく「水分補給は基本的に水」に切り替えるのがおすすめ。
● アメやグミより、すぐに食べ終わるお菓子
アメ・キャラメル・グミは口の中に長く残りやすいので、むし歯リスクが高めです。食べるなら時間の短いものを選びましょう。
● 食後の歯みがきの習慣
むし歯菌のえさとなる糖や食べかすを残さないことが最強の予防です。
歯みがきがむずかしいときは、せめてうがいだけでもしましょう。
■ 親子で取り組める生活習慣のチェックリスト
- 朝・昼・夜の歯みがきができている
- お菓子を食べる時間を決めている
- 水分補給は水かお茶
- 夜寝る前に甘いものを口にしない
- スポーツドリンクのむし歯リスクを理解する
- 食べたあとに何か飲んで口をすすぐ
- 毎月、歯ブラシを交換する
これらができるようになると、むし歯のリスクは大きく下がります。
■ まとめ:食べ物の選び方で歯は守れる!
むし歯は甘いものだけで起こるわけではありません。
甘くない食べ物でも、歯にくっつきやすいもの、飲み方・食べ方によって糖が口に残るもの、酸が強い飲み物など、さまざまな“落とし穴”があります。
でも心配する必要はありません。食べ方の工夫・飲み方の選び方・歯みがきの継続で、むし歯はしっかり予防できます。今日からできることをひとつずつ実践して、健康で丈夫な歯を育てていきましょう。
ドクタープロフィール
原歯科医院 院長
原 英次
詳細はこちら
新着ブログ
-
2025.12.02
【幼児・小学生の歯科知識】よく噛むことの大切さ:噛む力は歯と体を育てる -
2025.11.30
【幼児・小学生の歯科知識】食べ物とむし歯:危険なのは甘いものだけじゃない! -
2025.11.28
【幼児・小学生の歯科知識】 歯ブラシの選び方と交換のタイミング -
2025.11.26
【幼児・小学生の歯科知識】歯みがきの基本 歯ブラシの使い方 -
2025.11.24
【幼児・小学生の歯科知識】歯ぐきの健康ってなに?血が出るのは歯ぐきの病気 -
2025.11.22
【幼児・小学生の歯科知識】むし歯はどうやってできるの?むし歯予防を考えてみよう -
2025.11.20
【幼児・小学生の歯科知識】歯の種類と役割 乳歯と永久歯のちがい -
2020.03.30
ウイルス感染 -
2020.03.22
たくさんの歯があると幸せ(厚生労働省調べ) -
2020.02.10
食事は美味しいですか?




